モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第9章 三輪隊と黒トリガー
「黒トリガーだと!?」
「マジで!?」
そう。遊真君の使っているトリガーは普通のトリガーではなく、黒トリガーだ。これは、優れたトリオン能力の持ち主が、自分の持てる全ての力とトリオンを注いで出来る物である。製作者の意識が色濃く反映するため、使用者を選ぶ。
では、遊真君の黒トリガーは一体誰が...?ふと、脳裏に嫌な可能性が頭をよぎる。まさかね...?
僕が考えている間にもあっちの話は進む。
「これ以上コイツを狙っても良い事はない。損するだけだって城戸さんに伝えろ」
「お前の指示には従わん!」
秀ちゃんは何かに執り憑かれたように荒れている。何で秀ちゃんはここまで荒れるのだろう?
「ねぇ、秀ちゃん。どうして秀ちゃんは近界民が嫌いなの?」
秀ちゃんは一層不機嫌を増しながら答えてくれた。
「近界民が...姉さんを殺したからだ!」
衝撃的だった。あんなに優しくて暖かいお姉さんが、近界民に殺された?
だから秀ちゃんはこんなにも荒れていたのか。信じたくないと思いながらも、どこかで納得してしている自分がいた。
「そっか、そうだったんだね」
気付けば、秀ちゃんの頭を撫でていた。それは小さい子をあやすように優しく、自分でもわからないけど暖かみのあるものだった。
秀ちゃんは驚いた顔で僕を見る。
「秀ちゃんも怖かったんだね。大事な人を亡くしてツラかったんだね。自分だけが取り残されたように感じて怖かったよね」
知らぬ間に涙を流していた。秀ちゃんが僕が泣いている事にまた驚く。
「なぜ、明希が泣く」
「僕も...同じだから。秀ちゃんと同じなの」
秀ちゃんがハッと息を飲み、目を見開く。
「僕もね、大切な人を目の前で殺されたんだ。それに...僕に家族はいない。何年も前に行方不明になったんだ」
その言葉に 悠一以外全員が驚いているのが伝わった。
「僕はね、身寄りの無い子供なんだ」
みんなが言葉を無くしてしまう。唯一口を開いたのは、秀ちゃんだった。
「明希は、近界民が憎くないのか。大切な人が殺されたんだろう?」
「憎くなかったよ。その代わりに、力の無い自分が1番憎かった」
その大切な人は大規模侵攻で亡くした。その時はもうボーダーを辞めてたから、トリガーは持ってなかった。でも、あの人は今でも僕を守ってくれてる。
「それに、近界民全部が悪い奴とは限らないでしょ?」
