モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第20章 名前云々とお姫様(仮)

明希視点
目覚めたら悠一に抱きしめられた。ちょっとびっくりしたけど、でも、不思議と嫌じゃなくて、寧ろずっと抱きしめていて欲しいとさえ思うくらい暖かく、嬉しかった。離れてしまったのが少し寂しいが、外から蓮琉達の気配を感じたから仕方ない。
[悠一、そろそろ蓮琉達を呼んであげて。僕もみんなに会いたいし]
「わかった」
廊下で待っていたみんなが、一気に医務室に流れ込んでくる。それぞれに僕を呼びながら。
1番に僕のとこに来たのはやっぱり蓮琉だった。
「姉さん」
[なあに?]
「ごめん」
[どうして?]
「俺のせいで姉さんが出て行って、寝不足にも気付くのが遅くなって...姉さんを傷付けるつもりはなかったのに、こんな事になってごめん」
綺麗に90度に身体を曲げる蓮琉は、何度も何度も謝る。そんな事気にしなくていいのに、相変わらず真面目だな。
[蓮琉、頭上げて?僕もう気にしてないから]
「だが...」
[蓮琉の顔、今度はちゃんと見たいなぁ]
「...ッ」
渋々顔を上げた蓮琉は、申し訳ない気持ちやら何やらで複雑そうだった。
[おいで]と少し腕を広げれば、戸惑いながらも腕の中に納まる。
[僕の方こそごめんね。蓮琉は僕の事を心配してくれただけなのに、酷いことしちゃったね。蓮琉の事嫌いになったんじゃないよ。寧ろ、すっごく大切だと思ってるんだよ。戻って来てくれて嬉しかったし、また一緒に暮らせる日が来るんだって思ったら、嬉しすぎて涙が出ちゃう。蓮琉もそう思ってくれてるのわかるから...だからね、今回の事はお互い様って事で水に流さない?]
頭を撫でながら優しく語り掛ける。
泣いているのか返事は聞こえず、代わりに布が擦れる音と、「ありがとう」という心の声が聞こえた。
暫く蓮琉を宥めていると、規則的な呼吸音が聞こえてきた。蓮琉寝ちゃった。
「こんな所で寝たら風邪ひくじゃない」
[じゃあ、僕と一緒に寝ればいいよ。僕も、久しぶりに蓮琉と一緒がいいし]
「...そう。残念だったわね迅」
「小南もな。起きたら構って欲しかったくs「黙りなさい」...」
わぁ、桐絵からすっごい怒気と羞恥心が...。
室内の空気が玉狛特有のアットホームな雰囲気に変わり、懐かしさを覚える。自然と顔が綻ぶのがわかった。
そして、もう2度とみんなに迷惑を掛けない、寧ろみんなを守ろうと決めた。
勿論、蓮琉もだよ。
