モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第20章 名前云々とお姫様(仮)
蓮琉(ヒュース)視点
3日目も大勢の人が見舞いに来た。そしてその夜も城戸さんが来て、姉さんの容態を聞くでもなく他愛のない話をしてから帰っていった。
変わった事は特に無く、敢えて言うなら兄さんの様子がおかしいような気がする。
4日目
今日は玉狛総出でお見舞いに来る日。そして、姉さんが目覚めると兄さんが予知した日。
予知と診断が合っていれば今日、姉さんは目覚める。しかし、メンバーが来ても、昼が過ぎ、夕方になっても姉さんは目覚める気配を見せない。
「本当に今日なのか?」
「あぁ、間違いない」
この場にいる誰もが思った疑問を口にすれば、直ぐに答えが帰ってくる。
誰も信じてない訳では無い。だが、こうも目覚めないと疑う気持ちは抑えられない。
「焦らなくて大丈夫。もうちょいで目覚めるから」
「...」
今1番不安なのはおそらく兄さんだ。みんな口にはしないが、同じ事を思っているだろう。
兄さんが姉さんに対して特別な思いを持っている事はみんな知っている。誰かの事で焦ったり心配したり狼狽えたりするのは、姉さんの事以外で見たことがないからだ。
「あんたが1番焦ってるくせによく言うわよ」
「!」
現に、付き合いの長い小南はキッパリとそう言い放った。俺達の次に姉さんとの関わりが深く、兄さんとの関わりも長い。双方を知っているからこその、強気の発言なんだと思う。
「俺が、焦ってる?」
「えぇそうよ。ずっと明希を見つめて、不安そうな顔してるのはあんたぐらいよ。いつものヘラヘラ顔も意味を成さないぐらいにね」
「小南の言う通りだ。それに昨日から少し様子がおかしいぞ。どうせ姉さんの事だろうが」
兄さんの顔が曇る。俺の言った事は正しかったようで、隠し事は出来ないなぁと溜息混じりにぼやく。
「俺、普段は「俺のSEがそう言ってる」とか言って自信ありげに言うくせして、明希の事になるとそれが最善なのか、確定された未来なのかわからなくなるんだ。変だよな」
その表情は自嘲気味な笑顔を貼り付けられたお面のようで、俺の大嫌いな顔だった。
「変じゃないです」
1発殴り飛ばしてやろうかと思った時、修がそう言った。
全員の視線が1人に集まった。