モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第19章 睡眠不足と姉弟
シュウ視点
集まった物好きな彼らに、あの時の話をする。
中学生もいるため、ある程度暈すのは忘れない。
「んでまぁ、不眠になった理由が「起きたらまたあいつがいてイヤなことされる」って言うトラウマなわけよ。
余程大きな物音でもしねぇ限り起きねぇし、それこそキスだけなら気付かねぇだろうよ。それが嫌だから寝れねぇし、理由が理由だから誰にも言えなくて悪化する。
それが、今のこの状態ってわけだな。話はこれで終わりだが、なんかあるか?」
尋ねた所で質問は来ない。それもそうだ。こんだけハードな話をすれば、自然と空気は重くなるし聞き辛くもなる。
暫くの沈黙の後、1番に口を開いたのは遊真だった。
「…シュウ先輩は、ずっとこのままなのか?」
「このままって言うと?」
「このままずっと寝なかったら多分死ぬだろ?そしたら、今よりもっと大勢の人が悲しむし、やっと会えたって言う先輩の弟が絶望するんじゃない?」
「それは…」
「それに、このままじゃダメなことぐらい、頭の良い先輩ならずっと前からわかってるはずだ。わかってるから、自分でも何とかしようとしたと思う。それでもどうしようもなかったから、今こんな事になってる。違う?」
図星だった。言葉が出てこない。
全て遊真が言った通り、自分でもどうにかしようとした。でも、トラウマが強すぎてどうにもできなかった。
答えられず視線を落とした俺を見て、遊真が溜息をつく。
「…先輩はさ、これからどうしたいんだ?答えによっては俺達は手を貸す事もできるし、何もしない事を選ぶ場合もある」
「…俺は、明希が選んだ答えを優先させる。俺は、ただの人格「何言ってんの」…え」
僕の言葉を遮ったのは桐絵だった。
いつもの可愛い顔じゃなくて、イラついてる時の怒った顔。しかも、陽太郎の時みたいな荒々しい怒りじゃなくて、じわじわと感じる静かな怒り。
「シュウはシュウ、明希は明希でしょ。シュウで1人の人間よ。初めて二重人格の事聞いてから、ずっとそうして接して来たのに今更何言ってんのよ」
そうそうと、太刀川さんまで若干怒り気味に話す。
「俺だって、藤咲とシュウは別の人間として接してる。照れた時や、今みたいに否定的な所は本当に似てると思うが、それだけだ。お前はもっと自分を人間として肯定してもいいと思うぜ」