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モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)

第19章 睡眠不足と姉弟


三輪視点

ふと聞こえたその声は、明希のものだと気付くのに1秒もかからなかった。
一緒にいた2人に目を向けると何も言わず頷き、急に走り出した俺に着いてきた。
目的地は太刀川隊隊室の奥の部屋。明希が寝ているはずの部屋だ。

隊室に着いて奥の部屋の扉を開けると、そこには明希だと思われる布団の塊がいた。
明希?と声をかけると、ビクッと肩を震わせて振り向く。振り向いた明希の目元には濃い隈があり、呼吸も荒く過呼吸を起こしていた。

「み…んな…?」
「んだよそれ…」
「どんだけ寝てなかったらそうなんだよ…」
「取り敢えず出水は太刀川さんに連絡。陽介はそこで水を汲んで来てくれ」
「「了解」」

それぞれ行った後、俺は明希の背中を優しく撫でる。
最初は驚いていたが、次第に何かに怯えるようにしがみついて来た。

「何に怯えているか知らないが、今は俺達がいる。安心しろ」
「うん…」

だんだんと落ち着き、呼吸も元に戻って来た時陽介が汲んで来た水を飲ませる。
丁度その時に太刀川さんと出水も戻って来た。

「藤咲!大丈夫か!?」
「あ、太刀川さん。もう大丈夫ですよ」
「いや、全然大丈夫じゃねーだろ。何でそんなになるまで放っといたりしたんだよ」
「すみません…」

そう言って明希の頬に手を当て、親指で隈をなぞる。
距離が近い気がしたが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

「明希、話せるか?」
「…うん、話すよ。これ以上は隠せないし、みんなもだいたい察しがついてるだろうし」

そして明希が話し始めようとした時、隊室のドアが開かれた。振り向けば、玉狛の連中と菊地原と影浦先輩が入って来ていた。

「よぉ、迅。ナイスタイミングだな」
「何がナイスタイミングなのかわかんないけど、明希は返してもらうよ」
「おいおい、人聞きの悪い事言うんじゃねーよ。俺が攫ったみたいじゃねーか。藤咲が自分の意思でここに来たんだぜ?文句言われる筋合いはねーよ」
「…嘘はついてないな」
「嘘つく必要がねーもん。なぁ?出水」
「そっすね」

目の前でバチバチと言葉の闘いが始まっている中、明希は大丈夫かと気になり見てみれば、悲しそうな表情で俯いていた。
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