モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第18章 同輩達と支部
蓮琉(ヒュース)視点
姉さんが居なくなってもう数日経った。悠一兄さんは「絶対帰って来る」と言うが、それでも帰って来ないのではと不安になる。
俺が変に問い詰めたりしなければ、姉さんが出て行くことも無かったのに...
「ヒュース」
ふと声を掛けられた。顔を上げれば近界民仲間の遊真が前に立っていた。
「...何だ」
「思い詰めた顔してたから声掛けた。あんま自分を責めるなよ」
「じゃあどうしたらいいんだ。俺のせいで姉さんが帰って来ないんだろ」
「お前のせいだったら玉狛のオレらみんなお前を責めてるよ。そうしないのは、誰もお前のせいだなんて思ってないからだ。もし俺がお前と同じ立場だったら、同じように問い詰めてただろうしな」
「...お前らが俺を責めない理由はわかった。だが、俺は自分が許せない。姉さんのあんな顔見たくなかったのに...」
誰に許されても自分は許せない。それと同じようにあのクソ隊長の事も許せない。
「なぁ、アキ先輩の昔話してよ」
「いきなりなんだ」
「アキ先輩がいい人って言うのは誰もが知ってる。でもそれは友達や仲間から見ての感想だろ?身内視点ではどんな人だったのかなって気になった」
話すか迷ったが、このままでは負の方向へ気持ちが向いてしまいそうだったので、仕方なく話すことにした。
「俺から見た姉さんは、凄く優しくて明るくて強い人だった。SEさえ無ければな」
「どういう事だ?」
「その話、俺も混ざろうかな」
「お、迅さん」
「兄さん」
後ろから悠一兄さんが参加表明を示して来た。「どの辺から聞いていた」と問えば、「遊真が蓮琉に声掛けた辺り」と言われ、ほぼ最初からじゃないかと突っ込んでしまった。
まぁ流れで兄さんの話もするだろうし丁度いい。
「取り敢えず続きを話すぞ。
姉さんのSEは知っての通りだ。それのせいで聞きたくないものが聞こえたり、自分の意図とは関係なく聞こえてしまう事があるんだ。
先天的なSEは、持ち主にとってそれが日常化してしまうせいで、他人も自分と同じだと思い込んでしまう。
そのせいで姉さんは周りから避けられ、気味悪がられ、学校や幼稚園ではいじめが絶えなかった。
それでも姉さんが学校を休む事は無かったのは俺と悠一兄さんがいたからだ」