第1章 第七商社の鶴見
「お邪魔します」
「お邪魔します。わ、江渡貝くんちと同じくらい広いや」
「前山、迷惑をかけないようにと言われたろ。騒ぐな」
「あ、ごめんなさい」
「いいですよ別にそれくらい。軍隊じゃないんですから」
家に二人を招き入れた途端二人の個性を見た。気がする。月島は無愛想で厳しくて、前山はちょっとほんわかしている。前山の方が話しやすそうだな。と思っていたら前山がけほけほと咳き込んだ。
俺や弥作の家のあるこの地区は、所謂高級住宅地というやつで、どこの家も普通の一軒家よりは多分広い(普通の一軒家とやらに行ったことがないので詳しくはわからないが、クラスのやつが言っていた)。そしてここに一人暮らしの俺は一階の一部しか使っておらず、ちょっと歩けばすぐ埃が舞い上がった。
「汚くてすみませんね。来客なんか想定してない家なんで。なんかもう、適当にその辺の椅子にでも座っててください。飲み物飲みたかったら冷蔵庫に麦茶入ってるから、そこの食器棚からコップ出して勝手に飲んで。多分コップにも埃積もってるけど」
言いながら俺は自分の学生鞄を定位置に置いて今日の宿題の準備に取り掛かった。現役高校生は暇じゃないのだ。
二人は俺の言った通りにその辺の椅子に座ったが、そのまま二人とも特には動かなかった。手持ち無沙汰感もなく、待ち慣れているように思えた。