第1章 第七商社の鶴見
「あっゆうは…まだ帰ってなかったの?っていうか後ろの人たち誰?」
「お前な…」
鶴見以外のもの何も見えてなかったのかこの野郎!
俺のむかつきは最高潮だ。ぽっと出の知らない大人に、俺たち二人の日常が壊される。壊されている。それが怖くて仕方なかった。
「彼らは私の部下だよ江渡貝くん。そうだ、確か高橋くんのお家はお隣だっただろう?私の忘れ物を見つけるには少し時間がかかるかもしれないから、良ければ部下二人はそこで待たせてもらえないか。5月とは言え、日が沈むと冷えるだろう」
「鶴見課長…」
制止のような声をあげたのは月島という男だった。
「さすがにそれは厚かましいのでは…。それにそうすると彼の親御さんにも事情を説明しなければなりませんし」
そうだ、厚かましいぞ。特に俺は鶴見に対して好感を抱いていないので余計に知ったことかという気持ちだった。大体、忘れ物取りに来るのに部下二人も連れてくるんじゃねえ。一人で来い、一人で。
今のでちょっとだけ月島への好感度が上がった。
「大丈夫ですよ、ゆうはも一人暮らしだし。いいでしょゆうは、待たせてあげなよ」
「………」
大事な弥作の頼みなので、俺は渋々承諾した。
「すまないな高橋くん、用が済めばすぐ二人を迎えに来るから。二人とも、あまり迷惑をかけないようにな」
「…はい」
「了解しました」
「了解です。ちょっとの間よろしくね、高橋くん」
弥作の肩を抱いて江渡貝邸に入っていく鶴見を見て、背筋が寒くなるほど怒りを覚えた。