• テキストサイズ

【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第12章 【秀吉・後編】※R18


「案ずるな。こいつとは長い付き合いだが、これくらいでくたばるようなタマじゃない」
「光秀様…」
光秀がそう言うと、哀しみに打ちひしがれていた竜昌の顔が少しだけ緩んだ。
『そういえば、こいつもまだ十九の小娘なのよな…』
安土では秀吉たちに混じって一端の武将として働き、それ以前には秋津城の城主でもあった竜昌だが、美しい絹の打掛を羽織り、今や力なく座り込んでいる様は、か弱い乙女そのものだった。
「安土へは使いを出した。明朝には家康が来てくれるだろう。それまで側についていてやれ」
「ハイッ」
竜昌は再び気を引き締めるように、短く返事をした。光秀は、そんな竜昌の頭を片手でポンと撫でた。
竜昌は驚いたように光秀の顔を見上げたが、次の瞬間にはふっとその眼に憂いが浮かび、行灯の明かりで涙がうっすらと光った。
『俺では駄目か…』
光秀は苦笑すると、静かに部屋を後にした。

─── ◇ ─── ◇ ───

予想に反して、家康は安土から馬を飛ばして、その日の深夜には竜昌達のいる山寺に辿り着いた。
「ずいぶん早かったな」
出迎えた光秀に、家康はぶっきらぼうに答えた。
「光秀さんが俺に頼みごとするなんて、よっぽどの事だと思いましてね」
「良い勘をしている。秀吉も命拾いしたな」
「秀吉さんは?」
「あっちの僧坊にいる。竜昌も一緒だ」
二人が部屋に入ると、苦しげな顔で寝床で横になっている秀吉の傍らに、泣き腫らした眼をした竜昌がポツンと座っていた。
「家康様…!」
家康を見た竜昌の顔に、ホッと安堵の表情が浮かんだ。竜昌は姫君らしく、床に三つ指をついて家康を出迎えた。
「お越し頂いてありがとうございます」
「礼なら月に言って。今夜は月が明るいから夜な夜な走ってこれた」
てきぱきと道具を広げて治療の準備をしながらも、家康は照れ臭そうに視線を逸らした。秀吉の血で染まったであろう、打掛の袖が目に入る。
「お手伝いいたします」
「じゃあ…厨にいって、手桶にお湯を汲んできて」
「ハイッ!」
すでに夜半を過ぎていたが、家康による治療が始まった。

/ 372ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp