• テキストサイズ

【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第12章 【秀吉・後編】※R18


家康が傷の処置をする間、竜昌はずっと秀吉の手を握り続けていた。
時折、意識のない秀吉は、痛みのためにかすかな呻き声を上げ、竜昌の手をきつく握り締めた。
汗ばむ手を握り返すことしかできない悔しさに、竜昌はきつく唇を噛んだ。口中にうっすらと血の味が滲む。
「最初の処置が良かったから血もほとんど止まってる。あとは秀吉さんの体力次第だ」
一通りの処置を終えた家康は、小さな丸薬を取り出して、竜昌に見せた。
「あと、この鎮痛剤を使う。痛みというのはとてつもなく体力を消費するから、こいつでそれを抑える。ただ…」
「?」
「一応言っておくけど、このクスリは強すぎて、まれに譫妄が起きる」
「せん、もう…?」
「幻覚だよ」
竜昌は固唾を飲んだ。
家康は秀吉の首を支え、その丸薬を口内に押し込むと、水差しから少しだけ水を飲ませた。秀吉の喉がコクリと動き、丸薬を飲み込んだことが分かる。
「とにかく無駄な体力を使わせずに、傷を修復させることが先決だ」
「ハイ…」
「秀吉さんの手、冷たいだろ」
「は、ハイ」
竜昌は、秀吉の手をしっかりと握り直す。冷え切った指先がかすかに震えている。
家康は、秀吉の血に汚れた竜昌の袖口をちらりと見た。
「傷から大量に出血して、今は熱を失ってる状態。今、秀吉さんの身体は、傷を治すことよりも熱を取り戻すことに必死だ」
「ハイ」
「だから、暖めてあげてくれる?」
「え、あ、は?私が?」
「うん」
動揺する竜昌を尻目に、家康は治療道具を片付けて立ち上がった。
「明日の朝、もう一度様子をみて、それからどうするか決める」
「は…ハイ」
「じゃあ、あとは頼んだよ」
そう言うと、家康はあっけなく部屋から出ていった。
再び室内には 竜昌と秀吉の二人だけが残された。
『暖めると言っても…』
この人里離れた山寺には、修行僧たちが使う粗末な布団しかなかった。


/ 372ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp