第5章 青色ドロップ
「本当にたくさん紅茶があるね。迷っちゃいそう」
「あぁ、そうだね。名前はなににする?」
「んーそうだなぁ…」
名前は顎に手を当て、眉を寄せながらそっとメニューをのぞき込んだ。
メニューの四隅にデフォルトされた可愛らしい花々が散りばめられていて、とても可愛いメニューだ。思わず頬を緩ませながら、手書きで書かれたメニューをひとつひとつ目で追って読んでいく。
メニューの下には小さくイラストが描かれており、飲み物類にはイラストの横にどんな味わいか、どんな風味か書かれている。
色んな飲み物や食べ物があって迷ってしまう。
ケーキなんて10種類近くあって、可愛らしく描かれたイラストを見ているだけでお腹がなりそうだ。
今の時刻は15時30分。おやつの時間にもってこいの時間だ。
「じゃあ、これと…これにしようかな」
ふたつのメニューをゆっくりと指差してから顔をあげれば、思っていたよりも幸村の顔が近くにあり、名前は思わず目を見開いた。
驚いて、次の瞬間、顔を赤くして。
「可愛いね」
そんな名前を見て、まるで彼女を愛しげに見つめる彼氏のように微笑んだ幸村は掠めるだけのキスを落とした。
ちゅ、なんて音もならないほどの。掠めるだけのキスは嬉しいはずなのに、すぐに離れていってしまったからか寂しく感じてしまう。
「幸村くん、ここ外だから」
勝手に熱くなる頬をそのままに拗ねたようにそう言えば、外じゃなかったらいいの?、なんて肩を竦めくすくすと笑う幸村。
朝の時もキスしたけど、その時はなにも言わなかったよね?なんて追撃の言葉も紡がれてしまい、名前はぐうの音も出なくなり腹いせだとばかりにテーブルに置かれたベルを手に取りそれを鳴らした。
まだメニュー決めてないのに、と苦笑を漏らした幸村につられ名前も苦笑してしまう。自分のした事ながら、なんとも子供っぽい事をしてしまった、と思ったのだ。
「お待たせしました。お呼びでしょうか?」
先程メニューとベルを持ってきた女性店員がやってきた。相変わらず綺麗で見惚れていれば、いつの間にメニューを決めたのか、幸村は自分のメニューと名前のメニューを女性店員に伝えている。