第1章 1年目
「今の私たちの現状では、部隊を一つ、満足に支えられるかもあやしい状態です。…絶対高貴に目覚めていない貴銃士がいた場合、加護の不足による部隊への影響は避けられないかと…」
彼女の言わんとしていることは、私にも理解出来た。
絶対高貴とは、自身の能力が高まり、安定して強い状態を保てる力のこと。
当然、これに目覚めた貴銃士に必要な加護は相対的に少なくなる。
しかし逆を言えば、絶対高貴に目覚めていない貴銃士が戦闘するためには大きな加護の力が必要ということでもあった。
最近無傷で帰還する貴銃士が増えてきた中で、いつも彼だけが傷を負って帰ってきていたことに思い当たる。
かすり傷だから-と言った彼の先ほどの言葉が頭をよぎった。-本当は酷い傷を負っていたのを、隠していたんじゃないか。
どうなさいますか、マスターさん、と心配そうに訊ねる妖精さんに、私は言った。