第2章 2年目
はい、と答えて、私は立ち止まった。
彼の口から出てきたのは、予想だにしない言葉だった。
「僕はいつ、次の作戦に出れるかな」
背筋が氷っていくようだった。
「…ま、まだ、決めてないんですけど…」
言葉を濁す。彼の方を見ることなんて出来なかった。
妖精の加護が弱まっている可能性がある以上、彼を作戦に出すことなど出来る訳がなかった。
今回は怪我で済んだものの、次はいよいよ破壊されてしまうかもしれない。例え一日経てば貴銃士に戻るとは分かっていても、銃の姿になった彼を見るのは嫌だった。
シャスポーの声が私の背中を刺す。
「マスター!僕、もっともっと訓練するよ。絶対高貴の力に頼らなくても、マスターを守れるように、もっともっと強くなってみせるから…だから、お願い、作戦から外さないで」
「でも!」
そこまで言いかけて、はっと口をつぐんだ。
思わず言ってしまいそうになった。加護が必要だから、と。
それは言ってはいけない。それを言ってしまったら。この一年間の彼の努力を踏みにじることになってしまう。
「…お休みに、なられるんでしょう。お邪魔、しました…。おやすみなさい…」
消え入りそうな声でそう言って、私はバタンと扉を閉めた。
自分の部屋に帰る間、私は涙を抑えることが出来なかった。