第2章 2年目
「その、今日は、休めましたか?」
なるべく明るい声を装って私は言った。と言うのも、彼が昨日、ひどい怪我をしたからである。
作戦は何とか成功したものの、基地に帰還した時の彼の状態は凄まじいものだった。どう見ても破壊寸前だった。
彼の綺麗な顔に、血の川が流れる。荒い息づかいが私にまで届く。
止血をしている間中、彼はうわ言のようにこう言っていた。
「すまない、僕の訓練不足で…すまない、マスター…すまない…」
だがこれは彼の訓練不足なんかではないことに、私は薄々気付いていた。
これまで、彼がこんなにひどい怪我をしてくることはなかった。作戦は皆かすり傷程度で成功していたのだ。
成功していた作戦の布陣を変えるだなんてあり得ない。つまり、今までと同じことが、今までのように出来なくなった、ということだ。
あの妖精さんとの契約から、もうすぐ一年が経つ。
確証が持てないから、と私は自分に言い聞かせ、「大丈夫ですから、もう喋らないでください」としか言いようがなかった。