第10章 新米探偵に依頼あり
凛
「智晃。これくらい自分で弾けなくてはいけません」
智晃
「はぁ…っ…はぁ……いきなり、難易度上げすぎ…なんだよ…」
凛
「無理だと思ってはいけません。…貴方なら出来ます。だから、凉晴も遠慮しませんでした…そうですよね?」
凉晴
「…………嗚呼」
智晃
(あいつ…ぜってぇそれだけじゃねーな)
返事をするまでにあった間に、智晃は別の意味も込められていたのではと内心で思った。
凛
「もう遅いですし、そろそろ帰りましょうか」
智晃が立ち上がったのを見ると凛はそう口にしながら椅子から腰を持ち上げ、二人に近付き労うように肩を優しく叩いた。
翌日─…
凛
「これも可愛らしいですね」
店主
「ええ、とてもお似合いになると思いますよ」
凉晴
「少し露出が多くないか」
凛
「そうですか?」
前日に話していた通り三人で木造小屋のような雰囲気のある仕立て屋に来て、並んでいる洋服を各々見て回っていた。
淡い黄色のドレスを手に取り感想を述べると、仕立て屋の店主である60代前半のとても品のある女性が柔らかく笑みを浮かべて返事をしたが、それに否定する低い凉晴の声に凛は首を傾げる
凛
「では、こちらは?」
凉晴
「さっきと変わってないじゃないか」
智晃
(………過保護かよ)
凛
「向こうではこれくらい出てるじゃないですか」
いくつか見せてそれのどれも却下され続けた凛は唇を尖らせて意見を返した
凉晴
「まぁ…そうだけど」
智晃
「凛の好きなもん着させてやれば良いだろ」
凛
「そうですよ」
初めて見る凉晴の様子に驚きはしたが、暫くやり取りを聞いて呆れた智晃が溜め息混じりに声を吐き出すと凛が彼の傍に寄り、こくこくと頷いた
凉晴
「勝手に口出しやがって」
智晃
「お前は心配し過ぎだっつーの」
店主
「ふふ、彼女…素敵ですものね。心配にもなるわ」
光景を見ていた店主がハープを鳴らしたかのような穏やかな声で言葉を発する