第77章 スキーと悪夢。
「うっ・・・ハァ ひっく・・・ハァッ」
寒い。鼻水もでるし涙もでてくる。
疲れた。足の感覚もなくなってきた。
でも、でも・・・
こんなことで笠松さんを失いたくない。
「っさん・・・笠松さんっ・・・!」
震える声で何度も呼びながら足を進めていく。
ずるずると。ずっと。
「笠松さんっ・・・笠松さぁんっ・・・」
笠松「・・・情け、ねぇ声、出してんじゃねぇよ」
「!!笠松さんっっ!!!!」
肩にまわしていた腕を戻し、
一旦座り笠松さんを寝かせ意識を確認する。
「笠松さん!!笠松さん・・・!」
笠松「何泣いてんだよ。俺なら大丈夫だ」
「笠松さん・・・・っ・・・!!」
笠松「おいおい。だから大丈夫だって言ってんじゃねぇか」
泣いて声がでなくなった私の頬を手で優しく触る。
笠松さんの手袋はもう濡れて冷たいはずなのに暖かく感じた。優しく微笑んでくれる笠松さんの顔を見ると胸が張り裂けそうで・・・
「良かった・・・良かったぁ・・・。」
笠松「ごめんな。お前までまき込んじまって。俺がドジったつーのに」
「覚えてるんですか・・・?」
笠松「記憶のほうは正常だ。これだって、かすり傷だし、どうってことねぇよ」
傷のついた頬をぴっと親指でこする動作をする。
な?っと言って笑う。笠松さん、私を安心させようとしてるんだ・・・。
「・・・そ、ですね。良かった本当に・・・」
普段ならこれでもかってくらい慌てふためいて泣き出す私だが、笠松さんの気持ちにこたえようと必死に涙をこらえ、微笑んだ。
笠松「で、ここはどこだ?」
「とにかく下に降りてけばホテルに着くかと思い、向かってたんですが・・・」
笠松「そうか。じゃぁ進むか。」
「あ、歩けるんですか・・・?」
笠松「どうってことねぇよ。絶対離れるなよ」
「・・・はい」
濡れた手袋どうし、手をぎゅっと握りながら私たちは進んだ。