第77章 スキーと悪夢。
どうしよう。どうしよう。
降りて誰かを呼ぶ?でもその間に笠松さんに何かあったら?
ここは圏外。携帯さえ持ってきてない。
頂上まで行ったら誰かいる?いや、それなら下に降りるのと同じ事。・・・助ける?
ここから落ちて?もしかしたら死ぬかもしれないのに?
ここはイチかバチかで誰かを呼ぶ・・・?
色んな思考回路が頭を回る中
強風が吹き、私の背中を押した。
「---っ」
違う。誰かを呼ぶのにこの吹雪の中
私がやっとで助けを求めてもきっと遅い。
時間がない。笠松さんが凍え死ぬ。
崖とは言え、下へ向かえばホテルもある。
「・・・・いかなきゃ。」
ゆっくりと私は崖の壁に縋りながら降りはじめた。
90度の斜面ではなかったがかなり急な斜面の壁。
落ちたら、私まで気を失ってしまう。
それじゃ意味がない。ゆっくり・・・ゆっくり・・・。
やっと降り、急いで笠松さんの元へ駆ける。
「笠松さっ・・・・!!!」
積もっていた白いはずの雪が赤に染まっていた。
笠松さんのまわりだけが。
「笠松さんっっ!!」
抱きかかえて呼吸を確認する。
ーー・・・息はある。心臓は・・・・動いてる。
でも・・・
「頬から血が・・・」
意識もない。頬からの血もかすっている程度だが
このままだと危ない。はやく、なんとしてでも
笠松さんを助けないと・・・!
笠松さんの腕を肩にまわし、
とにかく下へ下へと足をすすめた。