第36章 束の間の日常
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エレンが人里離れた山小屋に、同期である104期の面々と一緒にいることを知ったのは、行き先を告げられぬまま走っていた馬上でのことだった。
彼は護衛役の同期達と共に、壁に戻ってきたその日からその場所に隔離されたのだという。エレンのことがずっと気がかりだった私は、やっとエレンの所在を知ることができてホッとした。彼の居場所は最重要機密事項であるため、今まで教えてもらえなかったのだ。
行き先がバレないように、私達は二手に別れ、更には二重尾行を行ったりして山小屋に向かったのだった。そのせいで到着した時にはすでに日は暮れかけていた。
エレン達のいる山小屋は森の奥深くにあったが、自然豊かな環境にある割には手入れが行き届いた奇麗な小屋で、とても居心地がよさそうだった。山小屋と聞いたから、かなりワイルドな建物を想像してしまっていたのだが、思っていたよりも普通だ。
小屋に入る前に玄関で靴の泥を落としていると、中からジャンやアルミンの賑やかな声が聞こえてきた。そこにはエレンやサシャ、ミカサの声も混じっていて、何となく楽しそうな雰囲気だ。どの子の声も思ったより明るい。