第36章 束の間の日常
「エレン達のところに行くぞ。お前も一緒に来い。ハンジ班の奴らも来る」
そう言って兵長はくるりと背を向けてしまったのだった。
(あれ?)
もしかしてキスしてもらえるのかもしれないなどと…おこがましい期待をしていた私は、拍子抜けしてしまって、そのおかげなのか眠気がすっかり覚めた。
浅ましい期待をしてしまっていた自分を恥じながら、私は微かな違和感を覚えていた。
(そう言えば…あの時以来、兵長からキスされていないかも)
兵長のキャラクターから考えても、のべつまくなしにキスをしてくるタイプには思えない。兵長らしいと言えば兵長らしいんだけど…でも、何でだろうすごく寂しい。
扉の方を向いて腕組みをしている兵長は、何も言わず黙って私を待っていたのだった。