第36章 束の間の日常
私も身体を休めるため、自室に引っ込んでベッドに横になった。
ベッドで眠るのなんて久しぶりだ。例え数時間であっても、睡眠を取るのと取らないのとでは体力回復に雲泥の差が出る。
ベッドに横になると、ふと先ほどの出来事が思い出されてくる。気を失ったモブリット副長の身体が覆いかぶさって、不可抗力とは言え一瞬抱き合うような姿勢になってしまった。だが…全くドキドキしなかったのだ。
(あれがもしも兵長だったとしたら…心臓が口から飛び出すほどドキドキしたんだろうなぁ…。当たり前だけど、やっぱり兵長は私にとって特別な人だ。だって反応がこんなに違うんだから。
兵長は今、エルヴィン団長の所にいらっしゃるのかな。あぁ…兵長への想いを自覚してからというもの、私の頭の中は絵と兵長の事でいっぱいだ。今朝までアトリエで一緒にいたのに、もう会いたくて仕方がなくなっている。
こんな状況なのだし、浮ついていたらダメなことくらい分かっているけれど…それでも止められない。誰かをこんなに好きになったのは初めてのことだから、この感情の昂ぶりを落ち着かせる方法を私は知らない)
早く兵長に会いたいな…。そんな事を思っているうちに、いつの間にか私は深い眠りに落ちていったのだった。