第35章 覚悟
コニーの言った通り、村の奥に進むとそこには仰向けになってじっとしている巨人の姿があった。
ギョロギョロとした大きな瞳だけが絶え間なく動いて、私達の姿を追っている。家屋から飛び出た巨人の四肢はまるで枯れ枝のようで、到底立ち上がって歩けそうにもないと思われた。
身体は動かさないまま、じっと私達の姿を見つめている巨人を見つめ返しながらハンジ分隊長が目を見開いている。
「動けないのか?でもそれじゃあ、この子は一体どうやってここまでやって来たんだろう。…何にしても、おとなしくしてくれている内に、杭で固定するんだ」
ハンジ分隊長の指示に、班員達は一斉に作業に取り掛かり始めた。
記録係を任されている私はその作業には加わらず、引き続き周囲を観察した。
馬で巨人の周囲をぐるりと回って、また巨人の顔の前に戻ってきた私は、もう一度まじまじとその顔を見つめた。
仰向けになって口元が引っ張られているからなのか、その巨人はうっすらと笑っているように見えた。大きな瞳が瞬きもせずに私を見つめているので、その笑みは余計に不気味だった。巨人達は大抵うすら笑いを浮かべているが、それは一体なぜなのだろう。