第35章 覚悟
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ラガコ村に到着した瞬間から、私は直感的に不自然さを感じたのだった。
すぐにはその理由が分からなかったのだが、馬を進めながら破壊された家屋を見て回っている内に、その違和感の正体に気が付いた。
「建物の内側から壊されている…?」
どの家も屋根が吹き飛び外壁が崩れ、まるで内側から何かが爆発したような壊れ方をしていたのだ。
「これは一体…?」
少し前を進むハンジ分隊長も、顎に手を当てて考え込んでいる。
「うーん…どういうことなんだろう?それに…これだけの破壊の跡から考えても、巨人達は相当に暴れたはずだ。なのに…」
チラリと分隊長がコニーの表情を伺うようにして言葉を止める。コニーは、村に入った時から能面のように表情を固く凍らせたままだ。
「…死体が一つもない。それどころか、血痕一つまだ見てないんだよ」
「…確かに」
分隊長の指摘に、私も頷いた。そのまま二人で議論に入ってしまいそうになったが、
「…俺の……」
ふいにコニーが話し始めたので、私と分隊長は彼の方を向いた。
「もう少し行ったところに、俺の家があります。そこに…巨人がいるはずです」