第35章 覚悟
「ところで、コニーも今回の調査に参加するの?」
立体機動装置を装着し、マントも羽織って完全装備をしている彼の出で立ちを見て私は首をかしげた。
今回の一連の作戦で一番過酷な任務をこなしたのは間違いなく104期の新兵達だ。きっと彼らも相当に疲れただろうし、まだ十分に傷も癒せていないはずだ。
そんな彼らを引っ張り出さなければいけないほどの、ひどい人手不足ということなのか。
それまではニコニコと笑っていたコニーの表情が、私の質問を受けてふいに陰る。
「…俺、ラガコ村の出身なんです。だから、ハンジさんが俺にも調査に同行してくれって…」
唐突に、じわ、とコニーの瞳に涙が盛り上がった。
「巨人が発生した時、俺、そのことを村のみんなに知らせに行ったんですけど…村には誰もいなかったんです…でも家はめちゃくちゃになってて…」
震える口元で話すコニーの姿に、私は思わず彼の背中に手を伸ばすと、ゆっくりとさすってやった。
コニーはきっと、周囲に気を使わせないために普段通り明るく振舞いながら、ギリギリのところで悲しみを押さえ込んでいたのだろう。 その姿は健気でもあり、痛ましくもあった。
「…きっと、調査をすれば分かるから、頑張ろうね」
「はい…っ!」
気の利いた励ましの言葉は浮かばなかったけれど、私の言葉にコニーは涙をぬぐって大きく頷いたのだった。