第35章 覚悟
少しして、兵長が動く気配がした。ギシとベッドが鳴り、ベッドに腰を下ろしたことが分かる。
すぐ隣に兵長が座っているのを感じたが、私はそちらを向くことができないまま、部屋の扉の方を向いて硬直していた。
はぁ、と小さいため息が聞こえ、
「おい」
兵長が口を開いた。その声に私の身体は滑稽なほどに飛び上がってしまう。そんな私の姿を見て呆れたのか、兵長はもう一度ため息をついた。
私はどうしたらいいのか分からなくて、身体を硬直させたまま、目だけをキョロキョロとせわしなく泳がせていた。
どうしたらいいんだろう。いつまでもこんな態度を取っていたら失礼だけど…でも、今はとても兵長の顔を見られそうにない。
「…おい、そう怯えるな。さすがの俺も傷つくぞ。いい加減顔を見せてくれないか、ラウラ」
そう言った兵長の口調はいつもの淡々としたものだったけれど、悲しそうな言葉に私は慌てて振り返った。兵長に悲しい思いをさせるなんて絶対にしちゃいけないという思いが、恥ずかしさをあっという間に上回ったのだ。