第35章 覚悟
後に残ったモブリット副長は、私の方を振り返ると、いつもの顔に戻って微笑んだ。
「ラウラ、分隊長が迷惑をかけてすまない。体調はどうだ?」
その優しい口調と向けられた表情に、私は思わず鼻の奥がツンと痛くなる。副長の顔を見たら何だか安心して気が抜けてしまったのだ。まだ本調子じゃないから、弱気になっているのかもしれない。
「もうほとんど元通りです。明日から業務に復帰できます」
「それは良かった。だが、あまり無理はするなよ」
そう言って副長は私の肩にポンと軽く手を置く。優しい顔立ちからは想像がつかないような、大きくて力強い手だ。
「じゃあまた明日な、ラウラ。リヴァイ兵長、失礼します」
副長が兵長の方に向き直って軽く会釈をすると、
「あぁ」
ベッドサイドに立っていた兵長は、こくりと小さくうなずいたのだった。