第35章 覚悟
もう分隊長の口を塞いでしまいたい…と本気で思い始めた時、静かに部屋の扉が開いた。
ギイー、とゆっくりと開かれるドアの隙間から顔をのぞかせたのは兵長で、夜の闇のように暗く無機質な目でじっとハンジ分隊長を見下ろした。
あっ、と思ったけれど、兵長の全身から発散されている怒気に気圧されて、私は声も出ない。
その間にも兵長はジリジリと忍び寄ってくるが、話に夢中になっている分隊長はそれに気がつかない。
そしてついに分隊長の背後に到達した兵長は、地の底から響いてくるような声で言ったのだった。
「おいクソメガネ…てめぇ、怪我人に何してやがる」
「やぁ、リヴァイ!何ってラウラのお見舞いさ」
分隊長は驚く風でもなく、全くいつもの調子でくるりと振り返って言った。
「俺が聞いているのは、何をしゃべってやがるのかって事だ」
「リヴァイがどんだけラウラの事を好きかって事を教えてあげてたんだよ」
「……てめぇ」
兵長の顔により一層濃い影が差した。
絶対に怒ると思って私は身構えたが、その後に続いたのは意外な言葉だった。