第35章 覚悟
分隊長は一人で話しているのにとても楽しそうだ。ペラペラと止まらない分隊長の話を、私は必死で制止した。
「ちょっと待ってください!いや、あの…確かに兵長とは…その色々ありましたが、なぜそう思ったのですか?」
私の問いに、分隊長は一瞬キョトンとした。
「なぜって、そんなの誰だって分かるさ。リヴァイの機嫌を左右できるのなんて、君くらいなんだから」
ポカンと口を開けた私を見て分隊長は少し困ったような笑顔を浮かべた後、言った。
「リヴァイはね、君のことがずーっと好きだったんだよ。君以外は全員気付いていたけど」
あははは、と愉快そうに分隊長は笑う。
だが私はそれどころではない。次々と飛び出してくるにわかには信じ難い言葉に、私はまたもや気絶しそうになった。まるで大砲で直撃されたかのような破壊力だ。
「まったく、普段は鬼みたいな顔してるくせに、ラウラといる時だけは穏やかな笑顔なんか浮かべちゃってさ。とんだ純情野郎だってことだね」
分隊長はなおも話し続ける。兵長が私の絵をベタ褒めしていたとか、アトリエに毎日来ていたのは私と一緒にいたいからだとか、私の贈ったクラバットを常に胸ポケットに入れて持ち歩いているだとか。
分隊長はなぜそこまでご存知なのだろうか。私はもう、恥ずかしさでいたたまれなくて頭を抱えてしまった。
だが、それでやめてくれる分隊長ではない。その後も延々と、兵長がどれだけ私の事を気に入っていらっしゃるかという話が続いた。