第35章 覚悟
…私だって兵長の事が好きだ。
鈍感な私は、自分の気持ちを自覚するまでに随分と時間がかかってしまったけれど、それに気付いてからはずっと兵長の事を想ってきた。
でもだからといって付き合いたいとか、そういう具体的なことは考えていなくて…この感情は憧れとでも表現した方がいいだろうか。
とにかく兵長みたいな人に、私のような者は不釣り合いだと諦めていた。
それなのに、思いがけず兵長からこんな事を言ってもらえるなんて。単純にすごく嬉しい。それこそ布団の中で転げまわってしまうほどに。
でも、だからこそにわかには信じられないのだ。なぜ私を?と。
だって私は今まで兵長に迷惑ばかりかけてしまっている。いや、むしろ迷惑しかかけていない…。絵に夢中になりすぎて、何度兵長のお手を煩わせたことか。
断言できるのがこんな事だなんて情けないけど、多分私は、全兵士の中で一番手のかかる部下だったろう。
そんな私の事を、面倒な奴だと思うならまだしも、好きだなんて。