第35章 覚悟
夕方になってから私は目を覚ました。兵長に抱きしめられながら、いつの間にか眠ってしまったらしい。
窓からは夕陽が差し込んでいて、当然のことながら兵長の姿はもう無かった。
特に怪我は無かったがずいぶん長い時間眠っていたので、念のためにと医務室の医師が診察をしてくれて、もう一晩医務室で休んだら業務に復帰しても良いという許可をくれた。
ベッドに戻って天井を見上げていると、兵長との今朝の出来事が思い出されてくる。
兵長の手の温かさ、近づいてきた小ぶりだが整った顔、心臓を射抜かれてしまいそうな鋭い視線、意外にも柔らかかった唇…。
それらを思った途端、ボッと頬が燃えるように熱くなるのを感じた。思わず頭まで布団をかぶってジタバタと悶えてしまう。
あれが現実のことだったなんて、いまだに信じられない。
(お前のことが好きだ)
そう言った兵長の顔は真剣で、まっすぐに向けられた切れ長の瞳の中には私の姿が写り込んでいた。
私はポカンと口を開けてそれを見つめ返すよりなかった。あまりのことに言葉が出なかったのだ。