第34章 おかえり
「兵…長…?おはよう、ございます」
ほとんど条件反射のようにして挨拶をしたラウラは、まだ半分夢の中にいるようなぼんやりとした表情のままだ。
そんなラウラの頬に俺はそっと手を当てると、薄く開かれた唇にゆっくりと口づけた。俺の唇で覆い隠してしまえそうな小さな唇は、驚くほど柔らかくて、そしてとても温かかった。
しばらくその感触を楽しむようにして、何度も角度を変えて口づけを落とす。何度目かのキスの後、やっと俺は唇を離した。
ラウラはポカンと口を半開きにしたまま俺の顔を見上げていて、先ほどまで眠そうにぼんやりしていた目が猫のようにまん丸に見開かれていた。
どうやら今ので完全に目は覚めたようだが、自分が何をされたのかは理解できていないらしい。
俺は再度、ラウラに顔を寄せた。少しでも動いたらまた唇が触れてしまいそうなほどに。そして囁いた。
「嫌なら、今そう言ってくれ。でないと止めてやれそうにない」
瞬時にボッとラウラの顔が赤く染まった。
口がパクパクと動いているが、意味のある言葉は出てこない。慌てふためいている人間をここまで間近で見たのは初めてだ。目を白黒させるとは言うが、本当にそうなるのだと分かって可笑しくなった。
とは言え、このままいつまでもにらめっこをしている気もない。