第34章 おかえり
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壁の上でエルヴィン達の帰還を待っていた俺達は、近づいてくる無数の松明の群れを確認すると一斉にリフトの準備を始めた。エレンの奪還に向かった兵達が帰ってきたのだ。
最初に壁の上に運ばれてきたのはエルヴィンだった。リフトから降りた奴は、身体を支えられながら歩いていて、その表情はげっそりと疲れきっているように見えた。
「…てめぇ、そりゃあ…」
近寄ってみて俺はギョッとした。エルヴィンの右腕が無くなっていたからだ。
「リヴァイ、はは…見られてしまったか」
俺の視線に気付いたエルヴィンが力なく笑う。
「バカヤロウ、笑ってる場合か。さっさと手当てを…」
そう言っている最中にガクンとエルヴィンの身体が崩折れて、地面に膝をついた。持っていた松明がガランと放り出されて、奴の身体を支えていた兵士が大声で叫ぶ。
「団長!?聞こえますか団長!?まずいぞ意識が!!」
周辺にいた兵士達が一斉にザワめくのが聞こえた。どいつもこいつも顔いっぱいに不安の色を浮かべて凍りついていやがる。エルヴィンのこんな姿を見せては、士気に関わる。
「早くトロスト区に運んで手当てをしろ!!他の負傷者もだ!」
俺の飛ばした檄を受けて、兵士達は何とかまた動き出したのだった。