第34章 おかえり
その姿が目に入った途端、私の中で何かがプチンと切れた。
「へ、兵長おぉ~!!」
ぶわっと両目から涙が溢れ出す。私は間抜けな声を上げて、一目散に兵長目がけて駆け出した。
先ほどまで歩くのも精一杯だったことが嘘のように、グングンと足が前に動く。周りにはたくさんの兵士達がいるはずなのに、不思議と兵長の姿しか見えなかった。
走って行った勢いのまま兵長に飛びつくと、その逞しい身体は微塵もブレることなくしっかりと私を受け止めてくれた。
「兵長っ、リヴァイ兵長っ」
奪還作戦中、もう二度と兵長には会えないかもしれないと覚悟を決めたけれど、こうして生きてまた会うことができるなんて…本当に嬉しい!今はそれしか言えない!
兵長の肩口にグリグリと顔を押し付けて、私はバカみたいに繰り返し兵長の名を呼んだ。
背中に回された兵長の腕に力が込められて、さらにしっかりと抱きしめられるのを感じる。その逞しい腕から与えられる心地よい圧迫に、私は安心感に包まれたまま意識を手放していったのだった。