第34章 おかえり
その後私は、負傷者を移送する手伝いをして回った。立体機動装置を使って自力で壁を登れる者は少なく、大部分の兵士が何らかの介助を必要とするような状態だったからだ。怪我をしていなくても疲労で動けなくなっている者もいて、私のように動き回れる兵士はごく僅かだ。
結局私が壁の上に登ったのは、あらかたの兵士を運び終えてからだった。
リフトでゆっくりと登っていくと、少しずつ近づいてくる壁の上で大勢の兵士達が慌ただしく走り回っているのが見えた。皆、怪我人の手当てに奔走しているのだ。
リフトが到着して壁を踏みしめた時、私はやっと、帰ってきたのだという実感が沸いてきたのだった。 一気に緊張の糸が切れて、踏み出す足がフラフラし始めた。何だかめまいもする。
怪我人の介抱をする兵士達とすれ違いながらフラつく足で何とか歩を進めていると、不意に前方から私の名を呼ぶ声が聞こえた。
「ラウラ!!」
その声に、私はハッとして勢いよく顔を上げた。声のした方角を見れば、数メートル先にはリヴァイ兵長の姿があって、いつもポーカーフェイスの兵長が眉を下げて、まるで今にも泣き出してしまいそうな顔をしてこちらを見つめていた。