第34章 おかえり
自力では馬から降りられないミカサを、近くにいた駐屯兵と共に介助する。何とか馬から降りたミカサの身体を、すぐ後に馬から飛び降りてきたエレンが抱き上げた。
「…っ!エレン、自分で歩けるから」
「うるせぇ、おとなしくしてろ」
遠慮するミカサにエレンがぶっきらぼうに言う。言葉遣いこそ乱暴だったが、ミカサを抱くその仕草はとても慎重で、少しでも彼女が痛くないように気遣っていることがよく分かった。
二人をリフトに乗せると、私は外側からリフトの柵に手をかけた。それを見たエレンが首を傾げる。
「ラウラさんは乗らないんですか?」
「私は負傷兵を運ぶ手伝いをしてから行くよ。エレン達は早く上に」
「はい…でもラウラさんも疲れているでしょうから、あまり無理しないでくださいね」
「ありがとうエレン。さぁ、行って」
エレンの頭を数回撫でると私はリフトの柵を閉めた。少しずつ登っていくリフトを見送りながら、先ほどエレンの頭を撫でた手をキツく握り締めた。
(連れ戻すことができた…)
彼を無事に取り戻すことができたという事実を、やっと噛み締められたのだった。