第34章 おかえり
しばらく進んだところで、向こうの方からポツポツと松明の灯りが近づいてくるのが見えた。
それは退却してきた調査兵達だった。負傷兵を乗せた荷馬車に馬を横付けして中を覗き込むと、ぐったりと横たわるハンジの姿があった。
「てめぇ…なんってザマだ。生きてるんだろうな?」
「やぁリヴァイ。はは…おかげさまで」
俺の顔を見ると、ハンジはむくりと身体を起こして苦笑いを浮かべた。その顔や手にはグルグルと包帯が巻かれていて、それなりに酷い怪我であることが推測された。
「ハンジさん、まだ起き上がらない方が…」
と、傍らに座っていたモブリットが声をかけるが、ハンジは構わずに話し始めた。怪我はしているものの、どうやら元気はあるようだ。
ハンジからの報告を聞き、俺達は今の状況をより詳しく理解したのだった。ハンジ達と合流したエルヴィン達は、日没前には壁外に向けて出発したという。
「…ラウラは」
ハンジの話を聞きながら俺は負傷兵を運んでいる荷馬車に目を走らせていたが、その中にラウラの姿は無い。
「彼女も奪還作戦に参加したよ」
「そうか…」
自分でも驚く程暗い声が出て、俺は自分がどれだけ落胆したのかを知る。
俺もあいつも人類のために命を捧げると誓った兵士だ。戦地に赴くのは当然のことだ。だが…よりによって俺が側にいてやれない今、壁外に出ることになるとは。俺の手の届かない場所であいつにもしものことがあったら…。
俺の表情から察したらしいハンジが言う。
「大丈夫さ。ラウラ達はきっと無事に帰還する」
「あぁ」
その言葉に俺は頷くしかなかった。今回の作戦はエルヴィンが率いているんだ、きっとエレンを奪還して帰ってくるだろう。今はそう信じるしかねぇ。