第33章 道標
「あっ!?」
ミカサが声を上げる。私は瞬きをすることを忘れたように、目を見開いた。
「あ、あぁ、ああああ!!!エルヴィン団長っ!!」
視線の先でエルヴィン団長の大きな身体が、軽々と浮き上がっていたのだ。巨人に噛み付かれて。
「うああああ!!!」
深い谷に落下するみたいな感覚が瞬時に全身を包み込む。私は絶叫した。こういうのを…絶望というのかもしれない。私達を照らす唯一の光が…。
あまりのことに私達は一瞬怯んでしまった。だが、それをもう一度奮い立たせたのも、やはりエルヴィン団長だった。
「進め!!」
巨人に身体ごと持って行かれながら、団長が叫んだ。
「エレンはすぐそこだ!!進め!!」
その檄に、兵士達は怯みかけた心を持ち直した。
「!!!」
ミカサを先頭にした一陣は、迫り来る巨人達の中に突撃し、それを突破した。だけど頭上から迫り来る大きな手で掴み上げられた兵士もいた。いや…むしろそっちの方が多かった。一体何人の兵士が、今の瞬間を突破できたのだろう。