第33章 道標
巨人の群れから離れたところで一度馬を止めた私は、振り返って絶句した。それは壮絶な光景だった。鎧に巨人達が隙間もないほどに群がり、その身体にかじりついている。
「何だこりゃ!?地獄か?」
私の気持ちを代弁するかのように、同じく退避したジャンが呟くのが聞こえた。
「いいや…これからだ!」
間髪いれずに私とジャンの間を駆け抜けて行った人物がいた。エルヴィン団長だ。
「総員!!突撃!!心臓を捧げよ!!」
それを聞いて絶句しない兵士はいなかった。誰もが、「あんな状況のところに!?」と躊躇した中で、ミカサがいち早く動いた。私もそれとほぼ同時に動いていた。団長の指示に、もう身体が反射的に動くのだ。こういう混乱した状況であればあるほど、信頼する人の指示には瞬間的に身体が動くのだろう。
「クッ…」
私達の動きが引き金になって、他の兵士達も一斉に動いた。
「うおおおお!!」
私達は咆哮しながら突撃した。先頭をエルヴィン団長が走る。その背中にはためくのは、自由の翼…。そう、この方は人類の自由を取り戻すため私達を率いていってくれる道標なんだ。
「進め!!」
高く振り上げられた右腕は、何よりも私達を奮い立たせた。なんて力強いんだろう。私は、この人にだったらどこまでだって付いていける。
そう思った矢先だった。目の前を走っていたはずのエルヴィン団長の姿が、消えた。