第33章 道標
だが…今はそんな事を思っているヒマはない。正直、憲兵なんてどうなったっていい。重要なのはエレンを取り返す事だけだ。
エルヴィン団長の指示を受けていち早く立体機動装置で飛び上がったミカサに続いて、104期の面々やハンネスさんが森の中に飛び込んで行く。
私もそれに続こうとした時、森の奥から叫び声がとどろいた。この声は人間のものじゃないとすぐに分かる。聞き覚えがある…これは巨人の叫び声だ。
女型の巨人は叫び声で巨人を呼ぶ事ができた。今の叫び声にもそういう力があるのだろうか?
もう一度、立体機動装置のトリガーに指をかけた時、森の中から鎧の巨人が飛び出してきたのが見えた。
「あっ?!」
突然現れた鎧の巨人に、私はビックリして一瞬動きが止まってしまった。
一目散に走っていく鎧の肩に…拘束されているエレンの姿があった。
ザワッと全身の毛が逆立つ。
「エレンッ!!!」
私は馬の手綱を強く引くと、後を追って走り始めた。突然の方向転換だったけど、馬はパニックになることもなくちゃんと走ってくれた。
土ぼこりを舞い上げながら必死になって後を追い始めてすぐに、鎧の巨人の走行速度は女型の巨人と比べるとだいぶ遅いという事に気がついた。これなら十分馬で追い付ける!