第33章 道標
「あと一時間もすれば日没だ…」
稜線の向こうに無情にも沈んで行く夕陽を見つめながら、私は思わず呟いた。
私達の目指している森にはまだ着かないのだろうか?途中、思った以上に巨人との遭遇があって手間取ってしまった。
早くしないとエレンがどこかに連れて行かれてしまう。絶対に取り返さなくてはいけないのに…。
そんな事を思っていた矢先だった。エルヴィン団長が煙弾を打ち上げ、大音声を上げた。
「前方に目標の森を発見。総員、巨人に注意せよ!」
エルヴィン団長の言葉通り、私達の進む先に巨大な木々の群生が見えてきた。
次第に近づいて行く森の木々の間から、わらわらと巨人達が姿を現す。そのあまりの数にギョッとする間もなく、森の奥が金色に光るのが見えた。
「!?あれは…巨人化の光…!」
一体誰が巨人化したのだろうか?今私達が追っている4人は、全員が巨人化できる人間だから、誰が巨人化してもおかしくない。
間に合ったか…という言葉の後、団長が大声で下知をした。
「総員散開!!エレンを見つけ出し奪還せよ!」
団長がそう言っている間にも次々と憲兵達が巨人に捕らわれて、馬だけが虚しく森の中に走り込んで行く。
…彼らは何て無力なのだろう。数時間前まではまるで王様にでもなったかの様に威張り散らしていたというのに、今はまるで幼い子どもの様に泣き叫んでいる。そんな姿に、ただただ驚くばかりだ。