第33章 道標
「巨人発見!!」
普段の壁外調査と同様に、私達は索敵陣形を展開して走っている。移動距離が少ないのでそれほど広範囲には展開していないが、索敵班の打ち上げた黒い煙弾が見えた。
「こんな時に…よりによって奇行種だなんて…」
次々と上がる黒い煙に、私は手綱を強く握り直して、黒煙の先を見つめた。
結局、その戦闘によって何名もの兵士が失われた。そのほとんどは憲兵で、群がってきた通常種にも何人も食われてしまったのだった。
単純な立体機動能力や剣さばきに優れていても、巨人と一度も戦闘したことない兵士の力など無力にも等しいということだ。
何しろ壁の外に出たこと自体が初めてなのだから、その恐怖と緊張で身体がすくんでしまって戦うどころの話ではない。
今回の作戦に参加している憲兵の中には年配者もたくさん含まれており、年齢的にはベテランの域に達していると言える。
だが先ほどの戦闘の様子を見る限りでは、調査兵団に入団したての新兵よりもか弱い存在であることは間違いなさそうだった。現に、私の横を走っているジャンの方がよっぽど落ち着いている。