第33章 道標
馬を壁の下に運び終えると、エルヴィン団長を先頭に私達は一斉に出発した。
部隊には調査兵団だけでなく駐屯兵団や憲兵団の兵士の姿もある。駐屯兵団はともかく、憲兵団が壁外任務に加わることなんて…私が知る限りでは初めてのことだ。
すぐ近くを走っている憲兵の男性兵士は、まだ壁を出発したばかりだと言うのに目に涙を浮かべてボソボソと鳴き声を上げていた。
「うぅ…何で俺たちまでこんな事を…こんなの、調査兵団にやらせときゃいいんだよ…」
その言葉に、怒りよりもむしろ呆れる気持ちの方を強く感じた。この人は、壁の中なら安全だと本気で思っているのだろうか?
私達が昨日の夜から必死になって動き回っているのは、壁が破られたからかもしれないからだ。つまり、壁は絶対じゃない。
それに…まだ検証は進められていないから分からないけれど、…あの壁を形作っているものが巨人達なのかもしれないのに…。
まぁ、そこまではこの彼は知らないのかもしれないけれど…、それにしたってあまりにも不抜けすぎていないだろうか。ウォール・シーナの恵まれた環境の中で、すっかり牙も爪も無くしてしまったのか。