第33章 道標
そうこうしている内に、ミカサが目を覚ました様だった。それに気付いたアルミンが駆け出した。私がそちらを見た時、ミカサは身体を起こして頭を押さえているところだった。
「ミカサ!待って、まだ動いちゃ…」
駆け寄っていったアルミンの胸ぐらを、突然ミカサが掴む。
「アルミン!エレンは!?どこ!?」
「ミカサ落ち着いて!動くんじゃない!まだ怪我の度合いが分からないだろ!」
珍しくアルミンが声を荒げたが、ミカサはアルミンを突き飛ばすようにして離れると、一足飛びにして壁の下を覗き込んだ。
壁の下には巨人がいたが、エレンではない。…ただの普通の巨人達だ。私達の気配につられて寄ってきたようで、登れるはずもないのに上に向かって手を伸ばし続けていた。
「どこ!?」
ミカサが振り返った時、そのすぐ後ろにアルミンも膝をついていた。
「エレンは連れ去られたよ。ユミルもだ!ベルトルトとライナーに…」
ミカサは凍りついたようになり、すぐには言葉が出てこないようだった。だけど何とか、声を絞り出す。
「誰か…その後を追っているの?」
「いいや」
「どうして」
怖いくらいに目を見開いて、ミカサは再度アルミンの服を掴んだ。まるで詰問するかのようなミカサの問いに、アルミンは圧倒されたようだったが、普段はあまり見せない毅然とした態度で状況の説明を始めた。それは簡潔だったけれど、現状を理解するには十分な説明だった。