第33章 道標
だが、救助活動に当たった兵士達は皆ヘトヘトに疲れ切ってしまった。何しろ、昨日は夜通し馬を走らせて眠っていないし、日中は女型巨人との戦闘があった。昨日の朝からほとんど休み無しで働き詰めなのだ。その上これだけの出来事があれば、疲れて当たり前である。
コニーとクリスタだって、昨夜は壁の穴を探し回ったあげく巨人の襲撃を受けたのでほとんど寝ていない。ハンネスさん達駐屯兵団先遣隊だって同じだ。みんな、疲労が限界にきていた。
幸い、報告の兵はすでに出発している。ハンネスさんが壁の上に戻ってきた時、報告の兵士をトロスト区に向けて走らせ始めていたのだ。
「おいお前ら、俺達が見張りをしていてやるから、とりあえず身体を休めろ」
負傷兵の手当てをしていた私とコニー、クリスタのもとにハンネスさんがやって来て言った。ハンネスさんは水も持ってきてくれていて、3人それぞれに手渡してくれる。
「おそらくこの後、エレンの奪還作戦が行われるだろう。その時に十分戦えるよう、今は休んでおけ」
「はい…」
肩に軽く手を置かれて、私はうなだれるようにして頷いた。兵士のほとんどが負傷してしまった今、エレンを追いかけることもトロスト区に戻ることもできないのだから、ハンネスさんの言う通り身体を休ませるくらいしかできる事がない。