第33章 道標
「う…ぐ…」
分隊長を乗せた担架がゆっくりと登っていくのを見守っている時、すぐ近くでうめき声がした。慌ててそちらを確認すると、モブリット副長がズリズリとこちらに向かって這いずってきているところだった。
「副長!!」
私が駆け寄ると、モブリット副長は荒い呼吸をしながら必死に声を絞り出した。
「ハンジさんは…分隊長は…」
「分隊長ならご無事です!今登って行っている担架が、分隊長ですよ」
「そうか…よかっ…た…」
ハンジ分隊長の乗った担架を見上げた副長は、ふうっと安心したように息を吐いて、そこで気を失った。副長の身体にもハンジ分隊長と同様に酷い火傷があり、かなりの深手を負っていることが分かった。
その後も私達は、負傷者達を順番に壁上へと運び上げていった。壁の下にいた兵士達は皆酷い火傷や、超大型が巻き起こした爆風で壁に打ち付けられて打撲や骨折をしていた。だが幸いなことに、あの衝撃による死亡者は一人もいなかった。
最後の一人を運び終えた頃には、エレンが連れ去られてからすでに3時間が経過していた。
ハンジ分隊長から指揮を任されていた二班のラウダさんや三・四班のラシャドさんが中心になって指示をしてくれたおかげで、隊は何とか機能を保つ事ができた。
それに、兵団は違えどハンネス隊長もいてくれたので、ハンジ分隊長という指揮官が負傷した中でも何とか持ちこたえることができたのだろう。