第33章 道標
コニーとクリスタには、先ほど運んできた二名の負傷兵の立体機動装置を着けてもらい、救助活動に協力してもらった。幸い二人とも怪我はしていない。
壁の下に降り立つと、そこはまるで真夏の炎天下のような熱さだった。それを何十倍も強くした感じだ。
むわっ、と頬を撫ぜる熱い風に、皮膚がヒリヒリと焼けるようだ。地面には兵士達が倒れ伏している。
私は、壁の上で待機していた二、三、四班とハンネスさんら駐屯兵先遣隊と一緒に救助活動を始めた。
残酷なようだが、軍隊にはシビアな決まりがある。それは、上官の命を一番に優先するということだ。それは決してえこ贔屓をするためではない。
上官には兵達を指揮する責任がある。率いていってくれる人がいなければ、私達は道標を失って組織的に働くことができないからだ。だからこの状況下で最も優先すべき人物、それはハンジ分隊長だった。
負傷兵達の間を掻き分けていくと、そのほぼ中央に分隊長は倒れていた。
「ハンジ分隊長っ」
私は駆け寄ると、まず生死の確認をした。幸い呼吸はしっかりしている。ただ分隊長の顔や身体にはひどい火傷があり、至近距離で先ほどの熱風を受けたことが分かった。
意識を失ってぐったりとしている分隊長を担架に乗せ、壁上で待機している兵士に合図を送る。彼らは、立体機動装置を使って引き上げ役を担っているのだ。