第33章 道標
ニファさんが行ってしまうと、私達は負傷者二人を担いで超大型巨人から少しでも距離を取るために壁の上を走った。
その間も、地上からは巨人の唸り声と激しくぶつかり合う音が響いてきて、足元の壁に振動が伝わってくるほどだった。ここからじゃ様子は見えないけれど、相当に激しく戦っていることが分かる。エレン…どうか無事でいて…。
十分に超大型巨人から距離を取ったところで、私とクリスタは担いでいた負傷兵を横たえた。遥か向こうの方に、超大型を前に待機している二班の皆の姿が見える。
コニーも背負っていた兵士を横に寝かせると、戦闘の様子を確認するため壁の淵に走っていった。
その時、エレン達が戦っているのとは反対側、つまり壁の内側からハンネスさん達が姿を現した。
「ハンネスさん!!」
「…な!?何だこりゃ…」
つい先ほどトロスト区に向けて出発したハンネスさん達だったが、突然の轟音に驚いて引き返してきてくれたのだ。
ハンネスさんは超大型巨人の姿を見て絶句したが、すぐに辺りを見回し始めた。
「エレンはどこだ!?この状況は!?」
そのあまりの気迫に、クリスタは飛び上がらんばかりに驚いたようだった。小さな身体がビクリと跳ね上がる。
「エレンは…」
私がそう言おうとした瞬間、鼓膜が破れそうなほどの咆哮が響いて、ビリビリと空気を震わせた。
「!?…!!」
とっさに耳を塞ぎながらも、クリスタが大声を上げて壁の下を指さした。
「エレン達はあっち側に…」
言われた方角にはコニーがいて、壁の下を覗き込んでいた。私とハンネスさんも走って行って、コニーと同じように見下ろした。
「何だ…鎧の奴…!?急に叫びやがって…」
コニーの言葉に、今の咆哮は鎧の巨人のものであった事を知る。
二体の巨人は壁際の地面に転がっていて、エレン巨人が鎧の巨人に寝技をかけているような格好になっていた。