第33章 道標
ニファさんはずっと、立体機動装置を着けていないコニーとクリスタの護衛をしていたが、分隊長の指示に従って鎧の巨人との戦闘に向かった。
「ラウラ、負傷者と二人のこと、よろしくね!!」
「はいっ!どうかお気をつけて!」
ニファさんの事を送り出そうとした時、クリスタがそのこぼれ落ちそうに大きな瞳いっぱいに涙をためて、
「ユミルはまだきっと…死んでませんので…どうか…頼みます…」
と言った。それを見て私は、この子は…何て顔をして言うのだろうと胸が締め付けられた。胸が…苦しい。だけどそれだけでは終わらなかった。
「ライナーとベルトルトはどこですか!?あいつら…立体機動装置着けてないんです!どうか…あの二人を助けて下さい!」
コニーの必死の叫びに、私とニファさんは思わず顔を見合わせてしまった。
…コニーとクリスタは、あの巨人達がライナーとベルトルトであることを知らないのだ。ついさっきまで共に死線をくぐり抜けて、やっと壁上にまで避難してきた仲間が、あそこで暴れている巨人達だなんて一体誰が思うだろう。
以前エレンから聞いた話によると、コニーは少しだけ頭の回転が遅く作戦の誤認も多い子らしい。でも、バカだけど素直で明るくて仲間思いのいい奴だと、エレンは嬉しそうに言っていた。
きっとこんな状況だから余計に、理解が追い付いていないのだろう。だけど、心底からライナーとベルトルトを心配しているコニーの表情を見たら、私はもうこらえきれなくなって思わず涙が出てしまった。なんってことだろう…。
あの巨人達がライナーとベルトルトだと知った時、彼の優しい心に一体どれほどの傷を与えるというのだろう。悲痛な顔をして涙を流すコニーの姿を想像したら、私は胸が張り裂けてしまいそうだった。