第32章 裏切り者達
ライナーは全く躊躇することもなく、なおも話し続けた。…まるで普通の話をしているかのような顔をして。
「は!?イヤ待て!全然わかんねぇぞ!」
突然暴露された内容に、エレンがあっけに取られて声をあげる。
「だから俺達と一緒に来てくれって言ってんだよ。で?どうなんだよエレン。悪い話じゃないだろ?ひとまず危機が去るんだからな」
「うーん、どうなんだろうな…」
エレンは腕組みをして考え込んでいるフリをして、何とか誤魔化そうとした。話があまりにも急展開すぎてついていけないのだろう。チラリとこちらを見る。
「オーイ、行くよー?」
離れていたアルミンはまだ異変に気付いておらず、立ち止まって話し込んでいるエレン達を呼ぶ。私はアルミンに向かってこっそりと目配せをした。何かとんでもないことが起こりそうな気がする…と。さすがにアルミンは、それだけで気づいてくれた。
ミカサは一見すると立ち止まっているように見えるが、じりじりと足が少しずつ動いていた。いつでも飛び出せる様子が伺えた。