第32章 裏切り者達
「ははっ、相変わらずだなぁお前は」
ハンネスさんは嬉しそうに笑顔を浮かべて、エレンの頭をグシャグシャと撫で回した。エレンはむくれているような表情をしていたけれど、ハンネスさんの手を払いのけることはしなかった。素直になれないだけで、きっと嬉しいのだろう。
ほんの少しの間だったが、和やかな時間が流れた。
ハンネスさんは、エレンの頭から手を離した途端にスッと真面目な顔つきに戻った。
「とにかくまだ気を抜くなよ。俺達は先に戻るぞ」
そう言ってハンネスさんは立体機動で壁を降りて行った。これからトロスト区に戻って、ピクシス司令に状況を報告するのだ。
私達もトロスト区に戻る。先ほどのハンジ分隊長から話の冒頭で、そう指示があった。穴が無いのであれば壁の修復作戦は中止になる。街で待機し、今後の行動についてエルヴィン団長の判断を仰がなくてはいけない。
ハンジ分隊長はすでに帰還に向けての指示を出している。私達は撤退準備をするために歩き始めた。私の少し前にはアルミンが、後ろにはミカサとエレンがついて来ている。