第32章 裏切り者達
そこにハンネスさんが加わってきた。
「おう、ラウラじゃねぇか。久しぶりだな」
「お久しぶりです。任務お疲れ様です」
私もハンネスさんに挨拶をした。ハンネスさんは、ピクシス司令との飲み会で知り合って以来、見かけるとちょこちょこと声をかけてくれる。とても面倒見の良い、温かい人だ。
私がエレンにした質問を引き継いで、ハンネスさんが言う。
「エレンだけじゃなくミカサやアルミンのことも、こんなに小せぇ時から知ってるぜ~」
そう言ってハンネスさんは自分の膝よりも低い位置を差してみせた。
「…そんなに小さくなかっただろ」
「おぉ?そうかぁ?俺にとっちゃ、今もたいして変わんねぇがな。まだまだガキだ」
「そうやって子ども扱いしてバカにすんなよ!」
先ほどと同様に乱暴なエレンの口調にヒヤヒヤしつつも、彼の様子が普段よりものびのびとして楽しそうに見えたので、私は微笑ましく思った。
エレンはいつも兵長やリヴァイ班の先輩達に監視されていたせいか、常に気を張りつめて緊張しているように見えた。
それはそうだろう…入団もまだの新兵で、突然同期達から引き離されて、たった一人で人類最強と調査兵団の精鋭集団に四六時中監視されたのでは、気が休まるはずがない。
それがとても不憫に思えたから、必要以上に構ってしまっていた訳なのだが…。
そんな彼が、年相応の子どもらしく大人に甘えている。ああやって甘えられる人がいることを知って、私は安心した。なんだろう…もはや母親のような心境だ。